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2021collection:「Memoriile unui vampir - 吸血鬼の回顧録」制作小話



毎度お久しぶりです。卯月きょーです。


またまた1年ぶり以上の新作となりました。

2021年も大好きな海外旅行に行けるような状態ではなく、

淡々とすぎていく日々に大変参っておりましたが

そんな中で仕上がった今回の作品、何故だか過去一に気合が入ってます。

ブログもアホほど長いです。





テーマは、吸血鬼と古物(アンティーク)。

前回同様、吸血鬼Vtuberの二次創作となります。


昔からファンタジー小説が大好きなのですが、

特に「ハリーポッター」に登場するようなアンティーク雑貨が大好きでして

西洋風のファンタジックなアイテムを作ってみたいなぁと思っていました。


オールド素材にどこか憧れや歴史を感じるように、手に取って見た時に特別な気持ちになれるよう素材を意識したフェチ度高めの仕上がりになっています。





イメージボード


頭になんとなく思い描いた世界観をかためるために、はじめに色々と試行錯誤します。


右の絵は最初に描いたイメージ。血だまりから日誌を拾い上げる吸血鬼。

ダークな部分が誇張されていますが、

この時から「手記」をポイントにすることは決まっていました。


出来上がったものを一見するとおしゃれでレトロな詰め合わせ、というようなイメージですが、本作の内容は紐解くと実はこんな感じの内容になってます。








主にネット上で参考になりそうなものを探し、そこから詳細な部分を決めていきますが、その他にも旅行先でインスピレーションを得ることもあります。

今回は特に、過去に訪れたイギリスとフランスの建築物、博物館の所蔵品に

強く影響を受けました。


今作のイメージボードの一部。色々なところから情報をかき集め、参考にしながら全体を形づくります





























完成物について







①イラスト本





表紙は、硬貨や建築物に施されるレリーフのような、気品のあるデザインに。

見た目は極めてシンプル、紙の繊維感や手触りの気持ちよさを重視しています。


また、今回は昔の西洋が舞台となる作品のため

17世紀以前の製本方法である「アンカット製本」を採用しました。


アンカット製本とは:

当時の本は紙を折り重ねて糸で綴じ、簡単な表紙が付けられただけの状態だったため、袋になった部分をペーパーナイフを用いて切り開きながら読む必要がありました。読み終えた後に製本店等で製本して、蔵書に加えるのが一般的だったそうです。


この本はしっかり表紙をつけているし糸綴りではない+サイズ調整のため下部分を裁断しているので、アンカット製本”もどき”にはなりますが...


ペーパーナイフで割くことを前提に、本文紙は荒い切り口が味になるような

繊維が出やすく、柔らかくて軽いハーフエアを使用。


ハサミの場合でも、刃を使って紙を割く形で動かせば

同様にふわっとした切り口になると思います。多分。。



印刷所の担当者さんと何度もやり取り・仕上がりの調整をした

ベストがんばったで賞ノミネート作品です。





②ダイス






普段使用している海外のダイスメーカーがコロナの関係で納期調整が難しかったため、

折角ならと、木製のダイスを作ってみました。

焼き印のようなレーザー彫刻加工がポイント、全体との相性も◎


パッケージの役割として、ガラス瓶を使用しています。薬瓶や標本を参考にしました。

小瓶のラベルはにはしっとりとした布のような紙を選び、

デザイン時点でウェザリングを施しています。

過去作品の方針から変わらず、

パッケージのまま飾りたくなるような完成度になっていると思います。










③ブローチ





定番となりつつあるピンバッジシリーズ。裏面をクダピンにしてブローチにしています。

ぬくもりの感じられる丹銅に、今回は多数の加工を施しました。



中でも凹凸の表現にメリハリをつけるために、凹部分に非常に細かい砂目加工を入れたところや、黒いハート部分に透明樹脂を盛って、つるんとした滑らかな表面にしたところがポイントです。


写真では分かりづらいですが、中心の赤は血をイメージして透明塗料を使用しています。


ケースの中に小さな数字のラベルが張り付けてありますが、これは丹銅を表す金属番号で、博物館の展示物ように、第三者がケースに保管する際に後から貼ったようなイメージです。



デザインラフ、候補






④カード等




型抜きカード、招待状、写真の入ったトレーシング封筒を麻紐で結び、

予め作って置いた封蝋を張り付けました。


型抜きカードには、それぞれ赤箔と無光タイプの銀箔加工がされています。

ざらっとした紙を使用しているので、

フレグランスを吹きかけて、しおりに使ってもよいかもしれません。

穴をあけてリボンを通すなど、アレンジ自由。















⑤包装





木箱の中に、天然の松の木毛(もくめん)を敷いて、本で蓋をしています。

木の香りやクラフトペーパーの質感が、全体的なレトロな風合いを後押しています。


リボンや封蝋の色は気分で変えているので、どんなラッピングで届くかはお楽しみです。




ハリーポッターのふくろう便ならぬ、コウモリ便?












さて、ここからは、

この作品の世界観の説明、内容の部分に触れていきます。


イラスト本のネタバレを含みますので

ご購入いただいた方で、未読の方はご了承の上ご覧ください。









まず、説明しなくてはならないのが本作における関係図です。

こんな感じ。





古美術商が、今回でいう私の代理となります。


別の世界を見ているみたい、というお言葉を多々いただきましたが

まさにその通りで、買い手も登場人物の1人です。

(各所での語り口調がやたら芝居がかっていたのは、それが私ではなく、売り手(古美術商)という設定だったため)


古美術商は単純に美しく価値のある美術品のレプリカを作成したにすぎず、

歴史的背景については、その時の所有者から聞き及んだことしかわかっていません。


ですので、「吸血鬼のことについて書かれているが、曰く、誰かが残した空想の産物だろう」とリーフレット(説明書き)では言っています。




それでは、これらは本当にただの創作物なのか?


勿論そうではなく、

この回顧録を遺したものこそ、「吸血鬼」その者なのです。





回顧録とは:過去の思い出や出来事をもとに書かれた文章や、その内容をまとめた冊子のことを指します。

本の表紙に刻まれた「吸血鬼の回顧録」とは、「吸血鬼の思い出、吸血鬼の出来事」が書かれた、吸血鬼による回顧録という意味になります。


その吸血鬼とは一体誰なのか、その話を以下で物語形式に語らせていただきます。







サーシャくんの没ラフ

リーフレットには、これらは教会で発見されたと書かれていました。

教会でかつて暮らしていた者が残したものだと考えるのが無難でしょう。


そこには当時、神父と1人の少年が

暮らしていました。

しかし、日が経つにつれ少年は段々と衰弱していき、仕舞には寝たきりとなってしまいます。

(作中にて教会やベッドで眠る少年のイラストを描きました)


眠る少年と密かに交友関係のあった

「サーシャ」という少年はこれを知り、

どうにかできないかと考えていたところ、

彼の父は息子に1通の手紙を預けました。








神父は、教会にて見知らぬ封筒を見つけます。

その手紙の封を切ると、中には血のように赤い色をした、社交界への招待状と

ブローチが入っていました。



(内容は、カメラ入力タイプの翻訳機(グーグルなど)など使えば何となく読み取れるはず。ブローチの意味も、そこ、もしくはブローチケースの裏に記載してます)





社交界の開催される4/23は、サン・ジョルディの日。


悪獣のいけにえに差し出された王女を救った伝説の騎士、愛の守護聖人サン・ジョルディの命日です。吸血鬼の囁きに、聖職者である神父は大きな選択を迫られます。










そして、神父はブローチを持ち、城を訪れました。


そこで獣に導かれ、会場の隅でグラスを傾ける青年を尋ねます。

青年は、かつてよく教会に訪れていた少年「サーシャ」とよく似た顔立ちをしていました。




複雑な表情でこちら(神父)を見るアレクサンドル・ラグーザ。お気に入り

神父は青年から小瓶を受け取ります。

それは、純潔の吸血鬼の血が入った小瓶でした。


(近代において吸血鬼のためのドナーや血液バンクの仕組みが確立された、という逸話の元、常備できる血液があってもいいなと思いブラッドタブレッドを創作してます。この仕組みを確立したのは、作中記載の人間です。ラグーザ兄弟たちがテーブルゲームをしながらワイングラスに入れて飲んでいたものは、ラベルなしの常飲のブラッドタブレット。本文の前述に、純血種の血は「死した魂をその意思と関係なく、蘇らせることができる」とある通り、とても貴重なものです)



ラベル:「ブラッドタブレット」「純血」「賞味期限:100年」「ラグーザ・A」




神父が撮った?写真。夜が明け、テーブルの上のダイスが1つ減っている。誰かが持ち帰った?


これを持ち帰った神父は、

少年を吸血鬼として蘇らせ、ハッピーエンド!


とはいかず、

結果としてその小瓶は役目を果たしませんでした。

何故なら、描かれた通り「天使」であった少年に死の概念は存在せず、

吸血鬼と交友を持ったことで天に咎めを受け、眠りについていたのです。



ただ1人、悪魔信仰者として道を踏み外し破門された神父。

吸血鬼と関係をもった聖職者は、死後、吸血鬼になると言われています。


皮肉にも魔の者に詳しかった神父は吸血鬼についてよく知っていました。

その後、彼がどうなったかはわかりませんが、

「吸血鬼とはなにか」「吸血することの意味」「吸血鬼の弱点」など、

戒めのように刻み付け、己が吸血鬼として回顧録として遺しました。








…さて、この哀れな神父の顛末、

全てを知っていた"サーシャ"の父であり城主にとっては

神をあざ笑う余興にすぎませんでした。

"サーシャ"はどんな心境だったのでしょうか。



「土地の管理者」などと書きましたが、

教会に残されたこれを誰が拾いあげ、

古美術商を使って皆さんの元へ行き届けさせたのかは、ご想像にお任せします。

※二次創作です




ちなみに冒頭の内容を含め、本作品の吸血鬼関係の知識は900ページほどある海外の吸血鬼の纏わる文献を参考にしています。

The Vampire Book: The Encyclopedia of the Undead https://www.amazon.co.jp/dp/B01NCJ8XMN/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1


例えば、靴底に故郷の土を詰める下りは実際に逸話として残っていますし

血の風呂に入る残虐な女吸血鬼がいたとか、

突然現れ瞬く間に宮廷の権力者に上り詰めた美丈夫が吸血鬼と噂されていた話とか、

果物や野菜のジュースを飲むタイプの吸血鬼がいたりとか、

興味深いエピソードが山ほどありました。


吸血鬼Vtuberさんが最新作のバイオ配信の中で「殺すと長期的搾取ができない」と言っていたのは驚いた記憶です。吸血鬼と血の関係性について記しましたが、まさに現代的な吸血鬼的発想と言えます。

作中にも書きましたが、吸血鬼が強い支配力を持っていた時代、吸血するということは、生命エネルギーを奪い相手を支配するための行為でしたが、人間らが対抗する知識を身につけたことによって、近代においては、己の欲求を満たすことに意義を見出している説があります。


また、作中に登場したその他の登場人物たちですが、

例えば社交界に訪れていた魔物の中に「リリス」と記された女性がいたと思います。

神父の察しの通り、吸血鬼の始祖のうちの1人です。

彼女は元人間でありますが、インキュバスやサキュバスの生みの親でもあります。

そのため、インキュバスを意識したデザインにしてみました。


また、"有名な吸血鬼ハンター"の弟、を描きましたが、

その"有名な吸血鬼ハンター"というのは、吸血鬼ものの定番小説「ドラキュラ」に登場する「エイブラハム・ヴァン・ヘルシング」を意識したりしています。



数え切れないほどある逸話や情報から物語を創作するため、

取捨選択に膨大な時間がかかりました。

それを皆さんが読み取るためにはこの場を訪れてもらうしかないということに気づき、

今さらながらコスパの悪いことをしてしまったな、と感じています...


しかし、どれも何かしらの気づきや繋がりを発見する瞬間は堪りませんね。

興味のある方は是非調べてみてください。






イベントでの頒布が実現していたら、お渡しする際に

吸血鬼の仮装をした売り子さんに、

リボンの間に一輪のバラを刺してもらおうと考えていました。



サン・ジョルディの日は、親しい人に本とバラを贈る日。



吸血鬼となってしまった神父へ、

吸血鬼より哀れみと謝罪を込めて。








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イベントで差し入れなどお待ちしてます!(^3^)


















Când l-am revăzut, s-a uitat la mine ca și cum ar fi fost pe ca

Nu m-am putut abține să nu râd. Cred că el crede că e vina lui. Mă întreb ce s-ar întâmpla dacă aș spune: "Știam că ești vampir".







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